GX -77Mに廉価なインシュレーターを使う
初掲載2004年1月12日

前回、GX-77Mを他のアクティブスピー カーと比較したのですが、完全に同一条件の比較ではありませんでした。
GX-77Mだけにインシュレーターを使っていなかったからです。

M85-DやMA-10Dには付属の固いゴムのインシュレーターが付属しており、説明書にも使用することを推奨するように書かれています。

左がM85-D付属のインシュレーター、右がMA-10D付属のインシュレーター。

前回、筆者は何故GX-77M付属のインシュレーターを使わなかったのでしょうか?
それは付属インシュレーターの有効性に疑問があるからです。

このコルクの板がGX-77Mのインシュレーターです(オンキョーはスペーサーと称している)。
写真では見えませんが、丸く切り抜かれていて、背面の粘着テープでGX-77Mの底面に貼付けることができます。
しかし、コルクの材質が柔らかいのです。
柔らかいインシュレーターはスピーカーの高域を吸収してしまうため、高域の伸びがいまいちなGX-77Mでこのインシュレーターを使うと逆効果になりかね ないと思いました。
また、モロそうな材質なので耐久性にも疑問があります。
気に入らずに後で剥がすのも面倒な気がしたので、最後まで使わなかったのです。


GX-77Mの説明書にもこのように簡単な説明があるだけで、あまり強く推奨するようなことは書かれていません。
非常に見つけ難いところに書かれており、メーカーもあまり自信がないのかもしれませんね。


イン シュレーターの原理

インシュレーターはスピーカーの振動を台に伝えないようにするものです。
インシュレーターがないと、スピーカーの振動が台に伝わって台が音を出したり、台から反射した振動がスピーカーに悪影響を及ぼすからです。
つまり、インシュレーターがないと余計な音が出ることになり、音像・定位・鮮明度に影響が出ます。

では、何故インシュレーターがスピーカーの振動を台に伝えなくすることができるのでしょうか?
それはスピーカーの底面を台から浮かせるからです。
スピーカーの底面は太鼓のようなものです。つまり、中心部が最も振動し、底面の端の振動が最も弱い。
だから、スピーカーの底面の四隅(三点支持もある)にインシュレーターを使うと振動が台に伝わり難くなるのです。

もちろん、インシュレーターにもある程度の振動が伝わるので、材質によって振動の伝わり方を変えることができます。
一般的には硬い材質のインシュレーターを使うと高域よりのバランスになり、
柔らかい材質のインシュレーターを使うと低音よりのバランスになります。

インシュレーターの原理は10円玉で十分確認できます。

この写真のようにスピーカースタンド(机でも良い)に10円玉を置いて簡単に実験ができます。
筆者もGX-77Mで試しましたが、音像・定位が明確になり、音もスッキリした感じになります。
もちろん、前回のレビューを修正する必要があるほどの劇的な変化ではありません(人によっては劇的と感じるかもしれませんが)。


今回 試した廉価なインシュレーター


今回試したインシュレーターです。
左からオーディオテクニカのAT6089CKAT6089FTAT6098です。
2000円〜3000円で8個も買える安い物です。
他にも廉価なインシュレーターは存在しました。
秋葉原では山 本音響工芸QB-1、QB-2そしてQB-3を良く見かけましたが、GX-77Mに使うには大き過ぎるので今回は見送り ました。


AT6089CK (コルク+真鍮)


コルクの材質はGX-77M付属インシュレーターのような柔らかくてモロそうなものではなくしっかりとしたものです。
メーカーによるとAT6089CKは「明るい音像とはっきりした音像」になるそうです。
実際に聴いてみると、10円玉インシュレーターと似たようなバランスだと思いました。
真鍮とコルクの材質が硬いので高音よりのバランスになるのです。
しかしながら、10円玉のようなどことなく雑味のある音ではなくてより安定した音が出ます。
もちろん、インシュレーターを使わないときに比べると音像と定位もはっきりとします。
クリアで爽やかな音と言えるでしょう。


AT6089FT (フェルト+真鍮)


フェルトと言ってもゴムのような物を染み込ませているようです。
メーカーによるとAT6089FTは「柔らかい音色と広がりのある音像」になるそうです。
確かに聴いてみると、音の指向性が低下して音場が広がったように聴こえます。
その反面、音像はAT6089CKよりもややボケていますが、インシュレーターがないときよりは良いです。
音は低音よりになり、低音の量が増えているように感じますが、音が広がるように感じるのでそれほど低音はきつく感じません。


AT6098 (ハネナイト+真鍮)


左から下面、上面そして厚紙のスペーサーです。
撮影時のフラッシュのせいで厚紙のスペーサーが真っ白に見えるが、本当はピンク色の円で縁取られており「この面がインシュレーター側です」と書かれていま す。
ハネナイトは制振ゴムの一種です。
ゴム全体としては硬いが、表面が粘っこいゴムです。
そのため、長時間スタンドに設置するとゴムが付着してスタンドに跡が残るため厚紙のスペーサーが付属しています。
ただし、厚紙のスペーサーを使うかどうかはユーザーに任されています。


厚紙を使って聴いてみるといまいちでした。
AT6089CK、AT6089FTよりも音が悪いのではないかと思ったくらいです。
厚紙はスタンドの上で滑りやすいことが原因しているかもしれません。
音に明瞭さが感じられませんでした。


厚紙を取り除いて使ってみると、音が良くなりました。
インシュレーターなしのときよりも低音が増えましたが、AT6089FTのような広がる感じではなくて指向性の高い切れの良い低音です。
さらに全体的に音の厚みが増したように聴こえます。
音像・定位はAT6089CKのように明瞭ですが、音全体のバランスは異なっており、濃い音になったような感じです。


GX- 77Mにインシュレーターは必要か?

とにかく10円玉でもいいからインシュレーターは使うべきです。
わずか80円で音全体を微調整できます。
今回登場した市販のインシュレーターは、どれが一番良いかと言うことはなくて、好みで選ぶべきでしょう。
クリアなAT6089CK、優しい音のするAT6089FT、切れの良い濃い音のAT6098と言ったところでしょうか。
ただし、過大な期待をしてはいけません。
いずれも10円玉と比較すると微調整の範囲だからです。
インシュレーターの原理でも書いたようにインシュレーターの主な目的は台からスピーカーを浮かせることであって、
インシュレーターで振動を制御するのは二次的な効果に過ぎません。
ですから、興味を持たれた方は10円玉で試して下さい。
10円玉で効果がないときは市販インシュレーターを購入する必要はないと思います。

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