SAITAMA-HA2をAT-HA2と比較試聴する
2003年8月10日初掲載
前回製作したヘッドホンアンプSAITAMA-HA2。
今回はこれと同じパワーアンプNJM2073を使用したオーディオテクニカ社製ヘッドホンアンプAT-HA2と比較してみます。
AT-HA2のネット上の評価は「便利だけどノイズが多い」とのことですが、SAITAMA-HA2もノイズが多いのでいい勝負になるかもしれません。

ヘッドホンアンプAT-HA2の紹介
比較評価の前にAT-HA2の紹介をしておきます。


SHURE E2と同様にサウンドハウスで購入しました。
冷やし中華の箱に梱包されていました。


これがAT-HA2の箱です。


本体(写真右下)と付属品です。


本体を3.5inchフロッピーディスクと比較。ACアダプタが必要なものの非常にコンパクトです。
デザインはなかなかのもの。
仕様の詳細はメーカーのページを参照して下さい。

比較試聴


写真のような環境で試聴しました。
音源は初代iPod。ヘッドホンはBEHRINGER HPS3000です。
音源とヘッドホンがチープかもしれませんが、SAITAMA-HA2やAT-HA2ではこれで十分。


電源ON時の破裂音(ポップノイズ)

ヘッドホンを接続したままSAITAMA-HA2の電源を入れると、「カン!」という破裂音がします。
これは電源を入れる時に急激に電圧が立ち上がるからです。
私が持っているCEC社のヘッドホンアンプHD51だと、電源を入れてからしばらくするとリレーで出力が有効になる保護回路が入っています。
AT-HA2もSAITAMA-HA2と同様に保護回路がありませんので、電源を入れると「ポン!」という音がしますが、SAITAMA-HA2よりはま だ刺激が少ないでしょう。
どちらにしても耳やヘッドホンに良くありませんので、
・電源ON時はヘッドホンを着けない
・高価なヘッドホンを接続しない(3000円程度のものまで)
この二つを守るべきでしょう。

ノイズ

SAITAMA-HA2はボリュームを最小にしてもかなりノイズが聴こえます。まるでラジオみたい・・・
AT-HA2でもノイズはありますが、SAITAMA-HA2よりはかなりマシです。
エアコンを入れた部屋だとボリューム最小状態で気が付かないくらいです。
しかしながら、実際にボリューム最小で使うことはありえませんので、SAITAMA-HA2やAT-HA2でのノイズは避けられません。
それでもAT-HA2のノイズはSAITAMA-HA2よりかなりマシです。

利得

SAITAMA-HA2の電圧利得は約30db(31.6倍)というかなり高いものです。

 
左の写真はiPodのボリューム表示ですが、わずか1mm〜2mmのボリュームを出すだけでもSAITAMA-HA2は十分に増幅します。
右の写真のようにボリューム0(真下)から90度回すだけで十分な音量が得られます。

一方、AT-HA2はiPodのボリュームがこの程度だと、十分に機能しません。


このようにボリュームを一杯に回しても普通に聴こえる程度です。
しかし、AT-HA2の利得がSAITAMA-HA2より低いとは考え難いのです。
NJM2073の仕様書によると、負帰還をかけて利得を低減するのは26db(20倍)が限度で、これより下げると高域の位相回りにより発振するそうで す。
そう考えると、AT-HA2も26db以上の利得を持っていると考えられます。
実装の問題かもしれませんね。

音質

音質はどちらもたいして変わらないと思います。
周波数レンジも狭いし、解像度も低いです。
ただし、ノイズはAT-HA2の方が少なく、SAITAMA-HA2の方が明るい音がします。
どちらもHi-Fi的な音を求めるには無理がありますが・・・

AT-HA2の分解

AT-HA2を分解して、SAITAMA-HA2との違いを検証してみます。


背面の三本のネジはプラスドライバで外せます。
前面の二本のネジを外すには六角レンチが必要です。


背面のパネルを外すと、このように前から基板を出すことができます。


箱はこのようにアルミでできた剛性の高そうなものです。


基板です。
中央右下にある8pinのICがNJM2073です。
全ての入出力にツェナーダイオードが入っていますが、回路の保護用だと思われます。
負帰還が行われており、利得はSAITAMA-HA2と同様の30dbでした。
抵抗器は5本線式の誤差1%のものが使われており、SAITAMA-HA2より部品のばらつきは少ないようです。


これがAT-HA2の出力回路です(負帰還の回路は含んでいません)。
C1,C2,R1まではSAITAMA-HA2とほぼ同様です。
R2はC1のリーク電流を放電するための抵抗、R3は回路の保護用でしょう。


基板の裏面は特にどうというものでもありません。


レギュレーター出力とNJM2073の電源入力の間には、1000uFの大きなコンデンサ(中央の一番大きなコンデンサ)が並列に接続されています。
さらに抵抗器(レギュレーターの左下)が直列に入っており、ハイパスフィルタを形成しているようです。
SAITAMA-HA2ではACアダプタを変えるだけでノイズが変化したのに驚きました。
AT-HA2でも電源のノイズに困ったせいかこの部分にハイパスフィルタを入れたようです。
写真から推定すると、抵抗器の値が「赤・茶・黒・銀・茶」(2.1ohm 誤差1%)ですから、
カットオフ周波数は
1/(2πCR) = 1/(2*3.14*(1000*10^-6)*2.1) = 75.8Hz
となります。
50/60Hzのハムノイズもカットすることができると思われます。

SAITAMA-HA2の経験からして、NJM2073は電源のノイズに影響されるようです。
また、IC内部で発生するノイズもかなり大きいと思われます。


評価の結論

AT-HA2の方がSAITAMA-HA2よりノイズが少なくて良いでしょう(次回の改造でSAITAMA-HA2のノイズは低減します)。
音の増幅率はSAITAMA-HA2の方が高いのですが、ノイズが多過ぎると思います。

パワーアンプNJM2073についてですが、NJM2073一つでステレオ動作可能な点は評価できます。
しかしながら、以下のことからHiFiに使うことは不可能かと思われます。

・SAITAMA-HA2で入力系統をシールドしたにもかかわらずノイズが大きい。
・SAITAMA-HA2でACアダプタを変えるだけでノイズが変化したことから電源のノイズを拾って増幅してしまう?
・IC内部でノイズを発生するらしく、回路にどのような工夫をしてもノイズを消すのは困難。

ヘッドホンアンプの自作には素直にオペアンプを使う方が良いと思われます。
手間はかかりますが、それだけの手間をかける価値はあるでしょう。

AT-HA2ですが、NJM2073のノイズにはかなり苦労しているようです。
NJM2073を使用したことを考慮すれば良くできているのではないでしょうか?
抜本的なノイズ対策としては、NJM2073を使わない新回路を採用するしかないでしょう。

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